個人再生について調べ始めた頃、僕が知りたかったことの一つが、
「で、これいつ終わるの?」
だった。
弁護士に相談する。
書類を集める。
裁判所へ申し立てる。
個人再生委員と面談する。
再生計画を作る。
認可される。
返済する。
調べれば調べるほど、
工程が多い。
しかも、「個人再生を申し立てた」と「個人再生が認可された」はまったく別の段階だった。
東京地裁が案内している基本的な流れは、
申立て → 開始決定 → 債権届出・債権調査 → 再生計画案の提出 → 決議または意見聴取 → 認可 → 再生計画に基づく返済
となっている。
この記事では、個人再生がどんな順番で進むのかと、それぞれの段階で何をするのかを整理する。
まず全体の流れを見る
個人再生は、大きく分けるとこう進む。
| 段階 | 何をする? |
|---|---|
| ① 申立て準備 | 収入・財産・家計・債権などの資料を集める |
| ② 裁判所へ申立て | 個人再生の手続きを申し立てる |
| ③ 個人再生委員の調査など | 東京地裁では個人再生委員が選任される |
| ④ 開始決定 | 裁判所が個人再生手続を開始する |
| ⑤ 債権届出・債権調査 | 借金の金額などを確認する |
| ⑥ 再生計画案の作成・提出 | いくらを、どのように返済するか計画を作る |
| ⑦ 決議・意見聴取 | 手続の種類に応じて債権者の回答・意見を確認する |
| ⑧ 認可決定 | 裁判所が再生計画を認可する |
| ⑨ 認可決定の確定 | 個人再生手続が終結する |
| ⑩ 返済 | 再生計画に従って原則3年以上5年以内で返済する |
こうして並べると分かりやすい。
問題は、
①の時点では⑩がものすごく遠く見える。
僕もそうだった。
① まずは個人再生の申立て準備
裁判所へ申し立てる前に、まず必要になるのが書類の準備だ。
個人再生では、借金だけではなく、収入、家計、預貯金などの財産も確認する。
そのため、申立書や債権者一覧表だけでなく、給与や口座、家計、財産を裏付ける資料などを集めていく。
僕の場合も、ここがかなり大変だった。
一度提出した資料があっても、申立て時点の最新資料を求められる。
給与。
口座。
家計。
副収入。
退職金。
匿名男、最新版。
必要書類についてはこちらで詳しくまとめている。
→ 「個人再生の必要書類は?実際に提出したものと集め方をわかりやすく解説」
② 裁判所へ個人再生を申し立てる
必要な書類がそろったら、地方裁判所へ個人再生を申し立てる。
ここで注意したいのは、
申立て=個人再生が認められた
ではないということ。
申立ては、あくまで裁判所に、
「個人再生手続きを利用したい」
と申し出る段階だ。
その後、裁判所による審査や、東京地裁の場合は個人再生委員による調査などが進む。
匿名男の場合
僕の場合、個人再生を申し立てたのは5月だった。
その日は担当弁護士から、
申立てを行い、裁判所で受け付けられ、事件番号が付いたことまで連絡をもらった。
ここでようやく、
「個人再生を考えている人」から「個人再生を申し立てた人」
になった。
被告になったと思ったら、
今度は申立人。
肩書きが忙しい。
実際の申立て当日の話はこちら。
③ 東京地裁では個人再生委員が選任される
東京地裁では、個人再生事件について全件で個人再生委員を選任する運用になっている。
個人再生委員は、裁判所の補助機関として財産や収入の状況を調査し、手続開始について裁判所へ意見を述べる。
また、東京地裁では計画弁済予定額を毎月振り込む履行テストも行われる。
全国どこでも同じ運用とは限らないので、ここは申立先によって確認が必要だ。
匿名男の場合
僕の場合は、申立ての翌日に個人再生委員が選任された。
そして約2週間後、
個人再生委員との面談。
借金の経緯。
収入。
支出。
副収入。
提出した資料。
いろいろ確認された。
最後には、個人再生委員から、
問題ないと思うので、進めていこうと思う
という趣旨の言葉をもらった。
ただし、これは開始決定そのものではない。
個人再生委員が意見を出し、実際に開始を決めるのは裁判所だ。
④ 裁判所から「開始決定」が出る
個人再生委員の調査などを経て開始が相当と判断されると、裁判所が再生手続開始決定をする。
開始決定では、債権届出期限、異議申述期間、再生計画案の提出期限など、その後の手続の日程も定められる。
開始決定は当事者へ通知され、官報にも公告される。
ここも非常に重要で、
開始決定=再生計画の認可
ではない。
まだ途中である。
匿名男の場合
僕の場合、
申立てから24日後に開始決定が出た。
申立て。
個人再生委員の選任。
面談。
そして開始決定。
ここまで来て、ようやく、
「ちゃんと個人再生の手続きが始まった」
という感覚があった。
でも、
まだ終わってはいない。
これは僕のケースでの進行であり、
「東京地裁なら24日で開始決定が出る」
という意味ではない。
詳しい体験はこちら。
⑤ 開始決定のあと、借金の金額を確認する
個人再生では、再生計画を作る前に、
誰に、いくら借金があるのか
を確認する必要がある。
そのために行われるのが、債権届出や債権調査だ。
東京地裁の案内では、債権者一覧表に記載された内容について債権者が争わなければ、改めて届出をしなくても記載どおりの届出があったものとして扱われる「みなし届出」の仕組みも説明されている。
民事再生規則では、原則として債権届出期間は開始決定の日から2週間以上1か月以下の範囲で定めるとされている。
出典: 裁判所「民事再生規則」
要するに、
申立て時にこちらが書いた借金額だけで、
そのまま返済計画を完成させるわけではない。
まず債権を整理して、それから返済計画を作る。
という順番になる。
⑥ 再生計画案を作る
債権の内容が整理されたら、
いよいよ、
「これからどう返すか」
を形にする。
それが再生計画案だ。
東京地裁では、法定の最低弁済額、清算価値、給与所得者等再生の場合は可処分所得などを確認し、返済額と返済期間を定めて再生計画案を作成すると案内している。
ここで初めて、
借金総額。
財産。
収入。
家計。
これまで集めてきた情報が、
実際の返済計画
につながっていく。
返済額がどう決まるかはこちら。
→ 「個人再生すると借金はいくらになる?『5分の1』の意味と最低返済額をわかりやすく解説」
⑦ 小規模個人再生では債権者の決議がある
個人再生には、
小規模個人再生と給与所得者等再生
があり、この段階の進み方が少し違う。
小規模個人再生では、再生計画案について債権者による決議が行われる。
給与所得者等再生では、決議ではなく債権者への意見聴取が行われる。
東京地裁は、その回答や意見を踏まえ、問題がなければ個人再生委員の意見も踏まえて裁判所が再生計画の認可を判断すると案内している。
なので、
再生計画案を提出した=認可
でもない。
ここにも、もう一段階ある。
個人再生、
なかなかゴールテープを切らせてくれない。
⑧ 裁判所が再生計画を認可する
必要な手続きを経て問題がなければ、
裁判所が再生計画認可決定を行う。
この「認可」が、個人再生を調べていると頻繁に出てくる言葉だ。
ただし、認可決定が出た直後にすべて終わるわけではない。
東京地裁は、認可決定が官報公告され、認可決定が確定すると個人再生手続が終結すると案内している。
つまり、
申立て。
開始決定。
認可決定。
認可決定の確定。
似たような言葉が並ぶけれど、
全部違う段階。
最初の僕には、
この区別がかなり分かりにくかった。
⑨ 認可が確定したら、再生計画に沿って返済する
認可決定が確定すると、裁判所での個人再生手続は終結する。
そこからは再生債務者自身が、認可された再生計画に従って返済していく。
東京地裁は返済期間について原則3年以上5年以内と案内している。
ここで大事なのは、
「認可されたら借金問題が全部終わる」ではなく、認可された計画をこれから実行していく
ということ。
個人再生は、
認可がゴールであると同時に、
返済生活のスタートでもある。
結局、個人再生にはどれくらい期間がかかる?
一番知りたいのはここだと思う。
ただ、
「申立てから必ず○か月で認可される」
とは言えない。
債権者の数。
債権額の確認。
提出書類。
追加資料。
再生計画案の内容。
裁判所の運用。
事件ごとの事情によって進行は変わる。
制度上も、開始後には債権届出期間や異議申述期間、再生計画案提出期限など、複数の期間が順番に設定される。
出典: 裁判所「民事再生規則」
だから、
「個人再生は○か月で終わる」
という数字だけを見るより、
今どの段階にいるのか
で理解した方が分かりやすい。
弁護士に相談してから考えると、さらに長い
もう一つ忘れやすいのが、
申立てより前にも時間がある
ということ。
弁護士へ相談。
契約。
債権調査。
費用の支払い。
家計の記録。
必要書類の収集。
申立書の作成。
これらを経て、ようやく裁判所への申立てになる。
僕の場合も、
弁護士と契約して翌日に個人再生を申し立てたわけではない。
その間にいろいろあった。
というか、
訴えられて判決まで出た。
予定表にそんな欄はなかった。
→ 「弁護士に依頼したあとでも訴えられる?個人再生前に実際に訴状が届いた話」
だから「個人再生にはどれくらいかかる?」を考えるときは、
裁判所へ申し立ててからの期間と、
弁護士へ相談してから申立てるまでの準備期間
を分けて考えた方がいい。
匿名男が経験した「申立てから開始決定まで」
僕が実際に経験した部分を整理すると、
申立て ↓ 翌日に個人再生委員が決まる ↓ 約2週間後に個人再生委員との面談 ↓ 面談後も履行テストを継続 ↓ 申立てから24日後に開始決定
という流れだった。
これは僕のケースであって、
「東京地裁なら24日で開始決定が出る」
という意味ではない。
ただ、
申立てをした瞬間に何かが完成するのではなく、
その間にも調査や面談があることは、僕自身が経験してよく分かった。
制度の図で見ると矢印一本。
実際にやると、
矢印の中にもいろいろある。
「開始決定」と「認可決定」は全然違う
個人再生について調べていると、
この二つはかなり紛らわしい。
開始決定
個人再生の手続きを開始する決定。
ここから債権届出や債権調査、再生計画案の作成などが進む。
認可決定
作成された再生計画を裁判所が認める決定。
さらに認可決定が確定すると個人再生手続が終結し、その後は計画に基づいて返済する。
つまり、
開始決定はゴールではない。
名前だけ見ると、
「開始が決まった!終わった!」
くらいの気持ちになるけれど、
開始である。
書いてある。
個人再生は「待つ時間」も長い
実際に手続きを経験して感じたのは、
個人再生には、
自分では何もできない時間
もあるということだった。
資料を求められれば出す。
振込みが必要なら払う。
質問が来れば答える。
でも、それが終わると、
裁判所。
個人再生委員。
債権者。
弁護士。
それぞれの手続きが進むのを待つ時間もある。
僕はこういう時間になると、
Googleで、
「個人再生 面談後」
「個人再生 開始決定 いつ」
などと検索していた。
調べたところで、
僕の事件が1日早く進むわけではない。
分かっている。
でも検索する。
流れを知っているだけでも少し楽になる
個人再生を始める前の僕には、
裁判所へ申し立てれば、
あとは何か大きな判定が一回あって、
個人再生が決まるようなイメージがあった。
実際は違った。
申立て。
調査。
開始。
債権の確認。
再生計画。
債権者への決議や意見聴取。
認可。
確定。
返済。
一段ずつ進む。
だから、
連絡がしばらく来ない時期があっても、
「今は何のための時間なのか」
が分かっているだけで、少し見え方が変わる。
僕にとって個人再生は、
一回の大きな決断で人生が突然変わる手続きではなかった。
いくつもの小さな段階を、
一つずつ通過していく手続きだった。
そして最終的に目指すのは、
書類を終わらせることでも、
裁判所からハンコをもらうことでもない。
そのあと、自分の収入の中で暮らしながら返していける生活をつくること。
結局、そこに戻ってくる。
次に読むなら
個人再生そのものを最初から知りたい
→ 「個人再生とは?借金を減らして生活を立て直す裁判手続きをわかりやすく解説」
申立てでは何を提出する?
→ 「個人再生の必要書類は?実際に提出したものと集め方をわかりやすく解説」
個人再生委員との面談はどんな感じ?
→ 「個人再生委員とは?面談では何を聞かれる?実際に受けた質問と当日の流れ」