2026年5月12日。
個人再生を申立てた。
翌日には、
個人再生委員が決まったと連絡が来た。
出た。
個人再生委員。
個人再生について調べていると、
たびたび登場する名前である。
ただ、
実際に何をする人なのかは、
この頃の僕も、
そこまでよく分かっていなかった。
分かっているのは、
僕の個人再生について、何かを確認する人。
くらい。
そして、
会うらしい。
面談の日が決まる
弁護士と日程を調整して、
面談日は、
5月27日になった。
場所は、
個人再生委員を担当する弁護士の事務所。
担当の女性弁護士も、
一緒に来てくれる。
一人ではない。
これは、
かなり安心だった。
ただ、
面談の日が近づくにつれて、
僕には一つ、
気になることがあった。
最近、ちょっと金使ってる。
飲み会、行きました
弁護士へ依頼してから、
借金の返済が止まった。
お金にも、
以前より余裕ができた。
そして匿名男は、
何をしたか。
飲みに行った。
もちろん、
毎晩豪遊していたわけではない。
借金して遊んでいたわけでもない。
でも、
飲み会だったり、
人付き合いだったり、
何度か、
「ちょっと今月使ったな」
という月があった。
しかも、
銀行口座の履歴は、
提出している。
家計も、
提出している。
つまり、
見れば分かる。
面談が近づくにつれて、
急に気になってきた。
「これ、
何か言われるんじゃないか?」
個人再生を申立てている人間が、
飲みに行っている。
大丈夫なのか。
借金250万円の説明より、
飲み会代を気にし始める匿名男。
優先順位がおかしい。
でも、
気になるものは気になる。
面談当日
5月27日。
仕事を終えて、
個人再生委員の事務所へ向かった。
少し早めに到着した。
担当の女性弁護士は、
もう来ていた。
僕は、
面談前に正直に聞いた。
最近、
飲み会などで、
少し交際費が多くなった月がある。
そこを、
何か言われないだろうか。
担当弁護士からは、
個別の出費だけを見るというより、
今後きちんと返済していけるのか、
そういうところを見られると思う、
という趣旨の話をされた。
何か聞かれたら、
そのまま答えればいい。
なるほど。
そのまま答えるしかない。
ここまで銀行口座も家計も全部出しているので、
今さら、
「飲み会など行っておりません」
は通らない。
4人で面談
時間になった。
部屋へ入る。
そこにいたのは、
個人再生委員を担当する弁護士。
もう一人、
若い男性の弁護士。
担当の女性弁護士。
そして、
僕。
4人。
匿名男の借金について、
弁護士3人と匿名男1人で話し合う。
人数だけ見ると、
かなり強そうである。
ただ、
実際の雰囲気は、
僕が想像していたより、
ずっと普通だった。
個人再生委員の弁護士も、
威圧的な感じではなかった。
いきなり、
「なぜこんなに借金したんですか!」
と詰められることもない。
よかった。
裁判ドラマではなかった。
「きれいに整理されていますね」
面談の最初の方で、
個人再生委員の弁護士が、
担当の女性弁護士に、
提出資料がきれいに整理されている、
という趣旨のことを言った。
僕は、
横で聞いていた。
そうでしょう。
とは、
もちろん言っていない。
僕がゴールデンウィークに、
銀行口座を掘り、
競馬を集計し、
1,197円の入金まで説明したものを、
女性弁護士が、
きれいにまとめてくれている。
あれだけメールした。
あれだけ資料も出した。
それが、
ちゃんと形になっている。
少し嬉しかった。
そして、
改めて思った。
担当変わって本当によかったな。
いろいろ聞かれる
面談では、
いくつか質問を受けた。
ただ、
今となっては、
全部を正確な順番では覚えていない。
なので、
ここでは覚えているものを書く。
まず、
以前の記事にも出てきた、
競馬。
銀行口座には、
馬券の購入履歴が残っている。
それ以外にも、
少額のくじなど、
娯楽で使った記録があった。
ただ、
金額も大きくなく、
継続的にやっているものでもなかった。
そのあたりは、
大きな問題にはならなかった。
競馬、
無事通過。
いや、
試験ではない。
絵でも借金したんですか
そして、
イラストについても聞かれた。
僕は絵を描いている。
展示をしたり、
作品を販売したりもする。
年間では、
数万円から、
多くても10万円程度の収入。
税金の申告上は、
赤字になっていたこともある。
そこで、
借金の原因に、
イラスト制作が関係しているのか、
という趣旨の質問をされた。
僕は、
説明した。
絵を描くための出費で、
生活が多少苦しくなることはあった。
でも、
「絵を描くために借金しました」
というわけではない。
借入れ自体は、
生活費を補うためのものが中心だった。
展示についても、
大きな個展を何度も開いて、
何十万円も使っていたわけではない。
グループ展が中心で、
そこまで大きな費用ではなかった。
絵を描く。
売れる。
あまり儲からない。
ここについては、
非常に説明しやすい。
悲しい。
飲み会については?
そして、
僕があれだけ気にしていた、
最近の交際費。
結果。
特に大事件にはならなかった。
何か聞かれたら、
そのまま答えるつもりだった。
でも、
僕が面談前に想像していたような、
「この飲み会は何ですか」
「なぜこの日にこれだけ使いましたか」
という、
家計簿取り調べ大会にはならなかった。
僕だけが、
前日まで、
勝手にビビっていた。
匿名男、
自意識過剰ふたたび。
「問題ないと思います」
一通り話をしたあと。
個人再生委員の弁護士から、
僕の記憶では、
こんな趣旨のことを言われた。
「問題ないと思うので、進めていこうと思います」
……。
問題ない。
その言葉、
めちゃくちゃ欲しかった。
判決が出た。
強制執行に怯えた。
口座を0円にした。
資料を集めた。
競馬を調べた。
収入を説明した。
借金の経緯も全部話した。
そして、
個人再生委員と面談。
ようやく出てきた言葉が、
問題ない。
かなり安心した。
もちろん、
この時点で、
個人再生が認可されたわけではない。
まだ、
手続きは続く。
でも、
少なくとも、
「ここで止まります」
ではなかった。
進む。
それだけで、
十分だった。
最後に、未来の話をされた
面談も、
そろそろ終わりという頃。
個人再生委員の方から、
今後のお金の管理について、
少し話をしてもらった。
貯金。
資産形成。
NISA。
iDeCo。
……。
少し前まで、
僕が考えていたのは、
どうやって今月の返済をするかだった。
その少しあとには、
「口座を0円にしてください」
と言われていた。
そんな僕が今、
弁護士から、
これから先のお金の話を聞いている。
借金をどうするかではない。
返済が終わったその先で、
どうやってお金を残していくか。
どうやって、
生活を作り直していくか。
そんな話だった。
なんだか、
不思議だった。
今はまだ、
個人再生の申立てをしたばかり。
これから返済も始まる。
認可だって、
まだされていない。
でも、
その先には、
貯金をしたり、
資産形成を考えたりする生活が、
本当にあるのかもしれない。
早く、そっちに行きたい。
そう思った。
借金の話をしに来た面談の最後に、
少しだけ、
借金のない未来の話を聞いた。
その未来が、
僕には、
かなり待ち遠しく感じられた。
面談終了
面談が終わった。
部屋を出る。
担当の女性弁護士と、
エレベーターのところまで一緒だった。
僕は、
お礼を言った。
この数週間、
かなりの速度で、
申立てを進めてもらった。
大量の資料も、
整理してもらった。
面談にも、
一緒に来てもらった。
本当に、
ありがたかった。
そこで別れた。
そして僕は、
電車に乗った。
忘れないうちに、28,000円
面談が終わったら、
やることが一つあった。
個人再生委員への、
毎月の積立。
金額は、
28,000円。
僕は、
電車の中で振り込んだ。
早い。
面談が終わったばかり。
まだ帰宅もしていない。
でも、
こういうものは、
後回しにすると危険である。
「家に帰ってからやろう」
「明日やろう」
「給料日だからやろう」
そして、
忘れる。
過去の匿名男には、
そういうところがある。
なので、
忘れないうちに払う。
もう、
「来月の匿名男」に任せない。
振込後、
担当の女性弁護士にも、
面談のお礼と、
振込みをしたことをメールした。
これで、
その日のやることは、
全部終わった。
かなり、ホッとした
帰りの電車。
この日は、
本当にホッとしていた。
個人再生委員との面談。
名前だけ聞くと、
かなり怖い。
何を聞かれるのか。
競馬は大丈夫なのか。
飲み会は怒られないのか。
絵の収入はどう見られるのか。
いろいろ考えていた。
でも、
終わってみれば、
進めていけそう。
そういう話だった。
5月12日に申立て。
5月27日に個人再生委員との面談。
そして、
その日のうちに、
28,000円を振り込んだ。
ここまで来た。
あとは、
裁判所が、
個人再生の手続きを正式に始めるかどうか。
開始決定を待つ。
聞いたことのある言葉が、
また一つ、
自分の話になった。