個人再生を弁護士に依頼すると、債権者へ受任通知が送られる。
僕も弁護士と契約したあと、借金の返済をいったん止めるよう指示を受けた。
そこで当時の僕は、なんとなくこう思っていた。
「もう弁護士が入ったんだから、債権者とのやり取りは弁護士に任せておけばいいんだろう」
実際、しばらくは静かだった。
ところが数か月後、裁判所から大きな封筒が届いた。
中に入っていたのは、
訴状。
弁護士に依頼していても、債権者から訴訟を起こされることはある。
この記事では、受任通知で何が止まり、何は止まらないのか。訴状が届いたらどうすればいいのかを、僕自身の経験も交えながら整理する。
結論:弁護士に依頼したあとでも訴えられることはある
まず結論から。
弁護士へ債務整理を依頼し、受任通知が送られたあとでも、債権者から訴訟を起こされることはある。
受任通知には、貸金業者から本人への直接の取立てを止める重要な役割がある。
金融庁も、債務整理について弁護士などへ委任した旨の通知を受けた貸金業者が、正当な理由なく本人へ支払請求することを取立行為の規制として示している。
出典: 金融庁「貸金業関係資料集」
ただし、
受任通知が届いたことで、借金そのものがなくなるわけではない。
そして、受任通知の効果は基本的に取立行為に関するものであり、債権者による訴訟などの法的手続きを一律に禁止するものではない。
金融庁も、受任通知による法律上の効果について「取立行為を中断させる上での効果に限られる」との考え方を示している。
ここは、僕も実際に経験するまでよく分かっていなかった。
受任通知が届くと何が変わる?
弁護士などが債務整理を受任すると、通常は債権者へ受任通知が送られる。
貸金業者については、受任通知を受け取ったあと、正当な理由なく本人へ直接支払いを求めることが法律で規制されている。
金融庁の多重債務者向け資料でも、専門家から受任通知が届いた後は、貸金業者による本人への直接の取立てが止まると説明されている。
そのため、
本人への電話や督促が止まり、弁護士が窓口になる。
これは債務整理を始める人にとってかなり大きい。
ただし、
「取立てが止まる」と、
「債権者が何もできなくなる」は、
同じ意味ではない。
ここを分けて考える必要がある。
受任通知が届いても、借金は残っている
当たり前といえば当たり前なのだけれど、受任通知を送っただけでは債務そのものは消えない。
個人再生なら、その後に裁判所へ申立てをして、開始決定、債権調査、再生計画案、認可などの手続きを進めていく必要がある。
東京地裁も、個人再生の基本的な流れを「申立て→開始決定→債権届出・債権調査→再生計画案→決議または意見聴取→認可」と案内している。
つまり、
弁護士と契約した瞬間に、個人再生が完成するわけではない。
申立てまでの準備期間もある。
その間も、債権自体は存在している。
そのため、債権者が裁判による回収手続きを選ぶこともあり得る。
匿名男の場合、本当に訴状が来た
僕の場合は、弁護士へ個人再生を依頼してからしばらく経ったあとだった。
ある日、仕事から帰ると、裁判所から大きな封筒が届いていた。
開ける。
最初の紙に書かれていたのは、
「訴状」
だった。
原告は、もちろん身に覚えのある債権者。
被告には、
僕の名前。
身に覚えのあることしか書いていない。
それでも、自分の名前の横に「被告」と書いてある衝撃は、なかなかのものだった。
ここから先の数日間、
「自分で答弁書を書くのか」
「裁判所へ行かなければならないのか」
「仕事を休むのか」
と、かなり焦った。
実際に訴状が届いた日のことはSTORYにそのまま残している。
訴状が届いたら放置しない
ここは重要。
裁判所から訴状や呼出状などが届いた場合、
「弁護士に依頼しているから大丈夫だろう」と、そのまま放置しない方がいい。
訴状には、期日や答弁書などに関する案内が入っていることがある。
すでに債務整理を弁護士へ依頼している場合でも、まず担当の弁護士へ連絡し、届いた書類を確認してもらうのが安全だ。
誰が答弁書を作るのか。
本人が出廷する必要があるのか。
どの書類をどこへ送るのか。
これは事件や依頼内容によって違う。
ネットの記事を見て自己判断する部分ではない。
匿名男の場合
僕は訴状が届いたその日に弁護士へメールした。
なかなか返事が来ず、かなりヤキモキしたあと、
「訴状などは一式送ってください」
という指示を受けた。
さらに、答弁書について確認すると、僕のケースでは弁護士側で対応してくれることになった。
これはあくまで僕が依頼していた弁護士から、僕の事件について受けた指示である。
「個人再生を依頼していれば、訴状は全部弁護士へ送るだけでいい」
という一般的なルールではない。
このあたりのやり取りも、STORYに詳しく書いている。
弁護士に依頼していれば、自分は裁判所へ行かなくていい?
これも、
ケースによる。
僕の場合は、弁護士から「本人が出廷する必要はない」と案内され、訴訟への対応を事務所に任せることができた。
ただし、依頼内容や事件の状況によって対応は変わる。
そのため、訴状に期日が書かれていたとしても、
「弁護士に頼んでいるから行かなくていいだろう」
と自分で判断しない方がいい。
担当弁護士に確認する。
結局これが一番確実だった。
匿名男の場合
訴状が届いた直後の僕は、
「仕事を休んで裁判所へ行くことになるのか」
まで考えていた。
その後、弁護士から自分の出廷は不要と聞いて、かなり安心した。
人生初の裁判。
本人、不参加。
実際、その日は普通に仕事をしていた。
訴訟が進むと、判決が出ることもある
訴訟が起きたあと、そのまま手続きが進めば判決が出ることもある。
僕の場合もそうだった。
弁護士に対応を任せている間に口頭弁論があり、その後、判決が出た。
本人としては、
「弁護士が対応中」
くらいの感覚だったので、判決書が届いたと連絡を受けたときは、
「もう判決まで出たの?」
という感じだった。
そして判決が出ると、次に気になるのが、
強制執行。
裁判所の案内でも、金銭債権について強制執行を行うには、判決などの「債務名義」が使われることが説明されている。
出典: 東京地方裁判所「勤務先情報取得」
僕の場合も、判決後に弁護士から強制執行の可能性について説明を受けた。
実際にどんな連絡が来て、僕が何を心配したのかはSTORYに書いている。
個人再生を申し立てれば、すぐ差押えは止まる?
ここも単純化しない方がいい。
「個人再生を申し立てた瞬間、すべての強制執行が自動的に止まる」
とは限らない。
一方で、再生手続開始決定後は、再生債権に基づく個別の強制執行が制限されるのが原則で、裁判所も、民事再生手続開始決定を受けている場合には再生債権に基づく強制執行を開始できないと案内している。
出典: 東京地方裁判所「財産開示手続等」
過去の裁判所の個人再生案内でも、開始決定後は再生債権者の個別的な権利行使が禁止され、強制執行が中止される一方、訴訟手続そのものは中断しないと説明されている。
つまり、
申立て、開始決定、訴訟、強制執行は、それぞれ別の段階として考える必要がある。
「もう弁護士に頼んだから大丈夫」
「個人再生を申し立てたから全部止まる」
と一括りにはできない。
匿名男の場合、判決が出て申立てが一気に動いた
僕の場合、判決が出たことで、個人再生の申立て準備が一気に動いた。
追加資料を集める。
家計を出す。
銀行口座を確認する。
借金の経緯を改めて説明する。
そして、個人再生を申し立てた。
制度だけを見ると、
弁護士へ依頼 → 申立て
と一直線に見える。
僕の場合は、その間に、
訴訟と判決が挟まった。
なかなか予定表どおりにはいかなかった。
申立てまで実際に何が起きたのかは、こちらのSTORYに続いている。
なぜ弁護士へ依頼しても訴訟が起きるの?
ここは、
「弁護士へ依頼したのに、債権者がひどい」
と単純に考えない方がいいと思う。
受任通知によって本人への直接の取立てが規制されても、
債権そのものがなくなったわけではない。
個人再生の申立てや開始決定までに時間がかかれば、その間に債権者が自らの債権について法的手続きを取ることはあり得る。
裁判所の判例にも、弁護士から受任通知が送られた後に訴訟提起が行われた事例があり、受任通知後の訴訟提起が当然に違法になるわけではないと判断されたケースがある。
出典: 裁判所「最高裁判所判例集」
もちろん、実際に債権者がなぜ訴訟を選んだのかは、それぞれの事件によって違う。
だから僕のケースについても、
「この理由で訴えられた」
と勝手に決めつけるつもりはない。
事実として言えるのは、
弁護士へ依頼したあとでも、僕には訴状が届いた。
ということだけだ。
「受任通知=もう安心」ではなかった
弁護士へ依頼したこと自体は、僕にとってかなり大きな安心材料だった。
本人への返済請求への対応を任せられる。
分からないことを相談できる。
訴訟が起きたときも、実際に対応してもらえた。
だから、
「弁護士へ頼んでも意味がない」
という話ではまったくない。
むしろ僕は、訴状が届いたときこそ、
弁護士に頼んでいてよかった
と思った。
ただ、
「弁護士に依頼した」
と、
「もう何も起きない」
は違った。
訴状が来ることもある。
判決が出ることもある。
だからこそ、何か届いたときには放置せず、依頼している弁護士へすぐ確認する。
僕が実際に経験して、一番伝えたいのはそこだ。
次に読むなら
本当に訴状が届いた日の話を読みたい
訴訟のあと、判決までどう進んだ?
判決後、個人再生の申立てはどうなった?
個人再生の流れを整理したい
→ 「個人再生の流れ・期間はどれくらい?申立てから認可・返済までをわかりやすく解説」