借金を整理するには、

弁護士にお願いする。

弁護士にお願いするには、

弁護士費用がかかる。

なるほど。

では、

そのお金はどこから出すのか。

ない。

だから借金しているのである。

個人再生を知った何年も前から、

僕がここで思考停止していた理由の一つが、

これだった。

金がない。

弁護士に相談したい。

金がかかる。

金がない。

入口で終了している。

ところが実際に弁護士へお願いしてみると、

僕の場合、

この問題は思っていたのとは全然違う形で解決した。

結論から言う。

弁護士費用を払っているのに、前よりお金が残った。

どういうことだ。

弁護士費用は分割だった

契約するとき、

弁護士費用は分割で支払うことになった。

一括で大金を用意する必要はなかった。

そして契約したその日に、

弁護士から今後のお金の動かし方について説明を受けた。

すぐに債権者へ受任通知を出す。

僕の場合は、

その月から借金の支払いをしないようにする。

そして、

引き落とされないように、

口座のお金を別の口座へ移しておく。

そう指示された。

契約したのは、

給料日を過ぎたあと。

そして、

その月の返済日前だった。

ものすごくタイミングが良かった。

給料は、

もう入っている。

借金は、

まだ引き落とされていない。

そのお金から、

契約した月の弁護士費用を払うことができた。

今まで毎月払っていた借金の額と比べれば、

分割した弁護士費用なんて、

言い方は悪いが、

屁でもなかった。

給与口座は、返済口座だった

それまでの僕のお金の動きは、

だいたいこうだった。

給与口座に、

給料が入る。

そして、

その口座から借金の返済が出ていく。

つまり、

給与口座=返済口座

だった。

給料が入ったら、

まず借金。

生活は、

その残りでやる。

僕はそこから、

わずかな生活費だけを別の口座へ移していた。

これで一か月生活する。

できない。

足りない。

借りる。

そして翌月。

また給与口座へ給料が入る。

返済される。

生活費を少し移す。

足りなくなる。

借りる。

給料。

返済。

生活費。

不足。

借金。

なかなか完成度の高いシステムである。

一生終わらないという一点を除けば。

返済額が多い月には、

15万〜20万円近く。

ほぼ給料と同じ金額が、

返済で消えることもあった。

給料日。

お金が入る。

そして、

ほぼ出ていく。

給料、

滞在時間が短い。

今度は、その口座からお金を出した

契約後は、

弁護士から言われたとおり、

返済の引き落としがされないよう、

給与口座のお金を別の口座へ移した。

そして、

借金の返済がなくなった。

あれ。

弁護士費用を払った。

家賃を払った。

光熱費を払った。

生活費も使った。

そして口座を見る。

お金がある。

あれ。

もう一回見る。

ある。

別に増えてはいない。

払うものを払った残りが、

ただそこにいる。

それだけである。

なのに、

僕にはかなり不思議だった。

なぜなら僕は、

借金をする前から、

ずっと金がなかった。

夢追い人、金がない

僕は若い頃、

漫画家を目指していた。

絵を描く時間が欲しくて、

仕事も週3日くらいに抑えていた。

当然、

収入は少ない。

夢はある。

金はない。

非常に分かりやすい夢追い人である。

その後、

ちゃんと働くようになった。

収入は増えた。

これでようやく、

普通の生活ができる。

と思ったら、

今度は借金ができた。

夢追い人終了。

借金人開始。

収入は増えたのに、

お金は相変わらず残らなかった。

若い頃は、

稼いでいないから金がない。

その後は、

稼いでいるのに金がない。

原因だけが、

進化した。

だから、

給料が入って、

家賃も払って、

弁護士費用も払って、

生活して、

それでも口座にお金が残っている。

こんな状態を、

僕はほとんど経験したことがなかった。

そして、次の給料日が来た

さらに驚いたのは、

翌月だった。

生活している。

お金を使っている。

でも、

まだ残っている。

そして、

その状態で、

次の給料日が来た。

口座に、

また給料が入った。

え。

前の金がまだいるのに?

僕の人生では、

なかなか見たことのない現象だった。

お金が残っているところへ、

新しいお金がやってくる。

普通の人には、

ただの給料日である。

匿名男には、

怪奇現象である。

給料とは、

入ったあとに消えるものだと思っていた。

違ったらしい。

残してもいいらしい。

文明開化である。

貯金ができてしまう

そこから、

かなり気持ちに余裕ができた。

弁護士費用を払う。

家賃を払う。

光熱費を払う。

普通に生活する。

それでも、

以前の返済生活よりずっと余裕がある。

そして、

あることに気づいた。

貯金ができてしまう。

笑った。

今まで、

給料をもらっているのに、

「貯金」というところまでお金がたどり着かなかった。

給料。

返済。

生活。

不足。

借金。

このルートしかなかった。

ところが、

借金の返済が止まったことで、

給料から、

「残る」

という新しい分岐が生まれた。

給料。

弁護士費用。

生活費。

残る。

なんだこのルート。

知らない。

カードがなくても、困らなかった

前回、

契約したその日に、

僕のクレジットカードは全員退場した。

その瞬間は、

「お金がなくなったらどうするんだ」

と思った。

カードを使うな。

そのための債務整理である。

それはそう。

ただ、

僕の場合は契約のタイミングにも助けられた。

給料日はすでに過ぎていて、

借金の返済日はまだ来ていなかった。

だから、

手元にはその月の生活に使えるお金が残った。

カードがなくなっても、

すぐ生活に困ることはなかった。

これは本当に、

タイミングが良かったと思う。

そして、

カードを使わなくても、

生活できた。

当たり前のことなのだが、

僕にとっては、

これも小さな発見だった。

弁護士に払っているのに、前より楽だった

ずっと僕は、

「弁護士に頼むお金なんてない」

と思っていた。

でも実際には、

僕の場合、

弁護士へ依頼したことで借金の返済が止まり、

そこから分割した弁護士費用を払うことができた。

しかも、

弁護士費用を払っているのに、

それまでよりお金が残った。

借金は、

まだある。

個人再生の申立ても、

まだしていない。

このあと、

半年近く弁護士費用を払いながら、

申立ての準備をしていくことになる。

でも、

この時点で生活はかなり変わった。

人生で初めてと言っていいくらい、

お金が残った状態で、

次の給料日を迎えた。

僕はようやく、

お金というものは、使い切らなくても翌月へ持ち越せる

ということを知った。

38歳。

遅い。

そしてしばらく、

匿名男には、

平穏な日々が訪れる。

借金の返済はない。

カードもない。

お金は残る。

弁護士費用を、

毎月払っていく。

順調である。

少なくとも、

このときは。